自然農法へのこだわり
山あいに棚田が広がるのどかな田園風景が見られる多可町では、使われなくなった田んぼを有効利用してラベンダーを育てています。
もともと、ラベンダーは標高800m以上の涼しい土地で育つハーブですが、標高約270〜400mの高温多湿の気候にも負けず、この土地にあった品種ラバンディングロッソ種を大切に育てています。
6月下旬から7月上旬にかけてラベンダーは収穫期を迎えます。
自然栽培で大切に育てられたラベンダーは、花が開く前のつぼみの状態で手作業で丁寧に刈り取られ、フレッシュな状態のまま、ぞくぞくと蒸留所に集められます。最盛期はなんと午前4時からフル稼働で1日中蒸留をしています。
つぼみのままフレッシュな状態で蒸留すると爽やかな香りが強くなり、ラベンダーらしい甘い香りが苦手な方にもぜひお試しいただきたい香りです。
高温多湿な気候の中での蒸留なので、収穫後4、5日ほどですぐに痛んでしまい、ラベンダーの香りが落ちてしまうため、品質を保持し、ラベンダーの生産者の思いに応えるためにも新鮮なラベンダーを蒸留するように心がけています。
毎年精油の成分分析を行い、気候や生育状況、収穫や蒸留のタイミングがどのように精油成分に反映するのか、日々研究も欠かさず取り組んでいます。
自然の恵みをエッセンシャルオイルに
1回の蒸留で約2時間かけて、50キロのラベンダーから約500mLの精油が抽出されます。この大きな窯から、わずか500mLのペットボトル1本分しか精油は抽出されません。
蒸留所では濃厚なラベンダースチームの香りが立ちこめ、その場にいるだけで、心も体も洗われ綺麗になりそうです。
蒸留が終わったラベンダーたちも、乾燥したのち来年のラベンダーのための肥料や、雑草避けとして使われます。
生産者の森本さんと竹内さん
ラベンダーの栽培を始めて今年で開園から14年を迎えました。当時はイングリッシュラベンダーの栽培をしてみたものの、6年間の間で合計13,000もの株が枯れ、園内のラバンディンは半分以上の株が枯れてしまうという事態に見舞われ、非常事態を何度も乗り越えてきました。そして、何とか軌道に乗ってきた5年前に蒸留加工施設が誕生しました。これを受け、多可町の支援があり、町内の休耕田を活用したラベンダー育成事業が始まりました。
11年経過しても毎日が試行錯誤の連続ですが、困難を乗り越える度に新たな意欲がわいてくるようになっています。
また、ラベンダーを育てて、搬入してくださる地域住民の方は我々のよき理解者です。当初は不ぞろいのラベンダーが納入されていましたが、「上質のラベンダー精油を生産するために」といった講習会を開催すると、本当に真摯な取り組みをしていただけるようになりました。私と竹内の思いも、搬入してくださる方々の思いに応えたい、ラベンダーの1本1本を大切に蒸留しようというように変化してきました。
森本さん(左)と竹内さん
我々が共通理解して実施していることは、自然栽培です。農薬はもちろん、化学肥料や動物性有機肥料は一切使用しておりません。ラベンダーの肥料分は、刈り取った草と抽出したラベンダーを乾燥させたものだけです。成長は遅くなりますが、軸がしっかりして咲いたときに真っすぐ立っている姿が美しくなってきます。
先日、オーガニック認証団体の専門家がお越しになり、栽培したラベンダーのドライフラワーを見せてほしい、さらに「古いものがありますか」と言われたので、5年前に採取した花のラベンダーポプリをお見せしました。するとキュキュッと揉んだ後、匂いを嗅いで「5年前の花から匂いがします。農薬や化学肥料を使っていたら、1年で匂いが消えてしまいます。これは自然栽培の証です。」と言われました。自然栽培を心掛けていた私どもには、大変うれしい言葉でした。
自然栽培の証として、農薬を使った畑では見られなくなったミツバチたちが、ラベンダーの花を囲んで元気に働いている様子が見られます。
自然にみちた香りをぜひご堪能ください。